2019年

長 月

 

中秋の名月「十五夜」は、秋の夜空に輝く満月を愛でる行事として、唐の時代の中秋節に由来しますが、日本では平安時代、平安貴族たちが優雅に宴をひらき、歌などを詠みながら月を楽しんでいたそんな大昔から続けられた行事です。

 

昔の人々は月の満ち欠けで月日を知り、それを農耕作業の目安としていました。月に対する畏敬の気持ちは、今と違ってとても大きかったことでしょう。そんなことから秋の満月には大きく輝くお月様を楽しむだけではなく、収穫に感謝をささげる神聖な儀式でもありました。

大切なお米の収穫に感謝をささげるのは、神社で村をあげて盛大に行う秋祭り。十五夜はちょうどこの時期に採れる里芋の豊作を感謝し、まだ収穫には早い月の神様の依り代である稲穂のかわりにススキをかざり、十五個のお団子をお供えして、家族でお月様を愛でながら感謝の気持ちをささげる行事でした。

 

では今、私達はどんな形でお月見をしましょうか。

まずお月様の見える窓でもテラスにでも、小さな台を置きます。そこに丸いお盆に小さな丸いお皿をおいて、お団子をのせお供えします。本当は十五個ですが五個で充分です。

本来は丸いものには四角いものをのせ、四角いものには丸いものをのせるのが盛り付けの基本ですが、まん丸お月様に対しては全て丸いものでお供えしましょう。そしてお花屋さんでススキを買って飾れば出来上がりです。これに梨やぶどう等を足したり、お神酒(おみき)を足したり、里芋できぬかつぎを作ってお供えしたり…、あなたらしいお月見を演出してくださいね。秋のお野菜や果物に感謝するのも忘れずに。

 

もう一つ、中秋の名月「十五夜」のひと月後に現れる「十三夜」、栗が採れる時期なので「栗名月」とも呼ばれています。「十五夜」と「十三夜」の両方をお月見してくださいね。片方しか見ないことを「片見月」と言われ、あまり良い事とはされませんでした。

 

九月と十月、お天気に恵まれたまん丸お月様に出会えると良いですね。

 

文 月

 

お日様が恋しい!

本当に暑くてもいい、お日様!お顔を見せて下さい。

梅雨寒が続く日々、あちらこちらで咳をなさる方々をお見かけします。私は2週間、咳と喉の痛みに悩まされました。人には移さないというお医者様のお墨付きをいただき、さぁ、お教室再開です。

 

毎年、7月は鯵です。

お造り、たたき、なめろう、鰺フライなど一年中見かける鰺ですが、何と言っても今が一番美味しい時。

新井白石は著書に「アジとは味なり、その美なるをいう」とし、「日本古語大辞典」にも『美味なる魚の名称とされた』とあります。鰺という漢字は3月頃から味が良くなるということから魚偏に参と云う字が充てられたと言われています。

そんな鰺ですが、最も美味しいのが産卵前の初夏から夏にかけてです。旬の鯵のお刺身は鯛以上とも!     

 

今年のお教室は「鯵の梅寿司」です。三枚におろし、背に細かく飾り切りした鯵をサッと酢にくぐらせ、大葉とちぎった梅干しを混ぜた寿し飯と合わせました。

ちょっと握り寿司風に。皆でおにぎり風にならない様ワイワイ楽しく握りました。

梅雨明けは23日頃とか、もう少しの我慢ですね。

 

水 無 月

 

ちょうど一年前になります。ホームページをリニューアルして、初めに書いた季節のお話しが水無月でした。無病息災を願う「芽の輪くぐり」についてお話しさせていただきました。早いもので一年が本当にアッという間に過ぎていきます。

 

そして今年の水無月は解禁された「鮎」と塩焼きにはなくてはならない「蓼たで」についてです。

 

 鮎は日本の川魚の代表格です。秋に河の河口近くでふ化すると仔魚は河口からあまり遠くない海で、プランクトンや小エビ等、動物性のものをエサとして食べて育ちます。そして春になると、5㎝~10㎝の稚魚となって河を遡上しはじめます。そこで食べるエサが変わります。川底のこけや藻を食べ成魚となります。天然鮎の若鮎はスイカのような、大きくなるとキュウリのような香りがします。それが「香魚」と呼ばれる所以です。秋になると体も大きくなり産卵期を迎えます。そして一年で一生を終えます。

 

夏の塩焼き、秋の魚田(落ち鮎の田楽)とても美味しい鮎料理です。

お料理教室ではすべてのクラスで鮎の塩焼きをいたします。鉄串を使い、おどり串の打ち方の練習をいたします。長めの器に頭としっぽを持ち上げた姿の良い鮎をたで酢とともに盛り付けます。

鮎の塩焼きに無くてはならないたで酢。

「蓼食う虫も好き好き」の蓼の葉です。蓼は古くから薬草として知られ、平安時代には魚の生臭さを消す薬味として、また殺菌作用もあると重宝されてきました。柳の葉のような若い葉を刻み、すり鉢ですって酢を混ぜる。たで酢の出来上がりです。
鮎をはじめスズキやイサキ等、夏の白身魚の調味料としてぜひ作ってみてくださいね。

初夏のすがすがしさを運んでくれますよ!

 

皐 月

 

長~い連休が終り、生活のリズムを少しづつ取り戻している今日この頃、皆様は体調が戻りましたか。

5月はとても清々しい素敵な月です。端午の節句の美味しい柏餅もいただき、店先には美味しい鰹やサクランボ、木の芽なども並びます。

 

お教室では、手作りの厚揚げに木の芽味噌、ふき味噌、柚子味噌をつけていただきました。

木の芽味噌は出盛りの木の芽をすり鉢ですって、白味噌とみりんを加えてすりのばします。この季節ならではのお味噌です。ぜひ作ってみてくださいね。

 

月末になると青梅も出てきます。遣唐使が中国から持ち帰ったと言われる、薬木がルーツとされる梅。平安時代の終わりには日本初の医学書『医心方』に梅干しの効能が書かれていたと言われます。江戸時代には時代劇にも出てくるように庶民の暮らしになくてはならない食べ物になっていました。出盛りの青梅は梅酒や梅シロップにご利用ください。夏の盛りに、氷を入れてお水で割ったり、炭酸で割ったりしていただくと疲れもすっきりとれそうですね。

 

木の芽味噌と梅シロップ作り、ぜひお試しくださいね。

 

卯 月

 

『目には青葉 山ほととぎす 初鰹』 有名な素堂の句です。

『鎌倉を 生きて出てけむ 初鰹』芭蕉も歌っています。

その昔、鎌倉沖で捕れた鰹を早馬や早飛脚で生きたまま江戸に運んだ。その分、値段も高かった。高くても初物を食えば、七十五日長生きできると、江戸っ子たちは競ってこれを求めた。芭蕉の句はそんな初鰹の生きの良さをたたえたもの。初鰹は江戸っ子の粋な食べ物だったようですね。

 

4月から6月頃が旬といわれる初鰹。戻り鰹と比べると、脂の乗りは少ないです。ちなみに戻り鰹は初鰹の10倍もの脂肪を蓄えているそうです。

 

そこで、初鰹を美味しくいただく調理方法。まず、デパ地下などでお買い求めになる時は

是非、皮付きの背身をお買いください。それを冷蔵庫でう~んと冷やしておきます。

まずフライパンに油を注ぎ、ニンニクの薄切りを少し多めに入れ、火をつけてください。ニンニクの色がつき、香りが油に移ったら、ニンニクを取り出し鰹の皮目を『ジャツと少し焦げめが付くぐらい焼いて下さい。

 

身の方はルッと回すぐらいでサッと火を入れます。すぐに冷水に取ってから。お料理して

下さいね。皮目にもタンパク質の形成や免疫力の向上などに必要なリジンとばれる必須アミノ酸がたくさんン含まれています。

たくさんの薬味と生姜で美味しく召し上がってくださいね。

 

弥 生

 

春の訪れを知らせる河津桜の満開の便りが届くと、春はもうそこまでと、心がウキウキしてきます。

3月は冬の間に寒さに耐えるように蓄えた脂肪や、運動不足で硬くなって血流も悪くなった重い体を冬眠から目覚めさす大切な時期です。
ウォーキングや体操をして体をほぐして下さい。
そして、春を沢山食べて下さいね!

 

春野菜は寒い冬を乗り越えた芽吹く命の栄養素がたくさん含まれていることは勿論、解毒作用や抗酸化作用も高いといわれています。

私の大好きな菜の花はビタミンC、B1、B2や鉄分まで多く含まれた栄養バランスの良い食材です。
日本料理にはもちろんの事、ニンニクやベーコン、唐辛子と一緒にペペロンチーノにするのもおすすめです。

蕗のとうの苦味は大人にならないと分からない美味しさですが、その苦味が新陳代謝を促してくれる春の大切な働きをしてくれます。

春キャベツ、新玉ねぎ、新ごぼう、スナップえんどう等、旬の春野菜をサッと茹でたり、蒸したりして胡麻だれやポン酢で沢山食べて下さいね。

疲れた胃や腸にもやさしくて、何よりデトックスにもダイエットにも効果がありますよ!

コートを脱いで、桜の季節を謳歌してください。

如 月

 

鬼は外、福は内、一年の邪気を払い福を招き入れる豆まきが終わると立春です。

気温は低くても少しづつ早く顔を見せ始めたお日様や、淡い日差しに春を感じられるようなりましたね。スーパーや八百屋さんの店先にも菜の花やふきのとうが並び始めます。

食卓にも春らしいものを何か添えたくなります。

手軽に出来るおすすめは、菜の花寿しです。

寿し飯に塩ゆでした菜の花、少し甘い炒り卵、下茹でした1㎝角ぐらいの人参を混ぜて下さい。パーッと華やかなご飯の出来上がりです。

海老やうなぎの蒲焼をプラスしたら、素敵な春のおもてなし料理になります。

お試し下さいね。

 

睦 月

 

初春のお慶びを申し上げます。皆様、おすこやかに新年をお迎えのことと存じます。

お教室も気持ちも新たに5日から一年生のクラスが始まりました。

 

「食」という字は人を良くするというのが語源の一つだと何かに書いてありました。私はこの言葉が大好きです。何を口にするのか、誰と口にするのか、どこで口にするのか。

私たちは食べることで生きているので、毎日の食事の一食一食で体調も体質も影響されていくと思います。

 

昔、父が母に「食事中に𠮟るのはやめなさい。食べ物がのどを通らないし、身につかない」と注意したことがありました。子供たちと顔を合わせるのが夕食時に限られてくると、ついついテストの点のことや、約束を守らなかったことなど𠮟るより怒りたくなったものでした。今思うとあの時の子供たちは一刻も早くテーブルを離れることだけ思っていたと思います。

何を作るか、何を食べてもらうのか、毎日の食事の用意は大変なことだと思います。忙しい時は上手に手を抜く、でも美味しくなくては困りますよね。

お教室ではひと手間かけることも、ひと手間省くこともおけいこしています。これから一年、ひとつでも多くの食卓においしい笑顔をお届けできるよう、スタッフ一同張り切っております。

 

また、この春から新しいクラスとして英語で日本料理のクラスを開設いたします。東京に在住の方はもちろん、日本に旅行にいらした方々にも一期一会の和食を学んでいただくクラスになります。

詳しくはまたお知らせいたします。本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

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